2021/2/26 苫小牧植苗 アキアジ地蔵尊を見に行く
先日、苫小牧の林道、湖沼をネットで調べているときだったかな。
ウトナイ湖畔にかつてサケの孵化場があり、そのとき建立されたお地蔵様が、
今もひっそり湖畔にたたずんでいるという情報にたどり着いたのは。
アキアジ地蔵尊の建立経緯についてはこちらのブログに詳しい。
英坊法師のブログ(BLOG of Old Man “EIBOU” like Buddhist priest) : アキアジ地蔵尊像に纏わる話(楽水No.867)
当時の事業者がサケの豊漁と慰霊を願って建立したものが今も人知れず湖畔に…。
これは行かねば。
ウトナイ湖畔は広大なヤチ(湿地)で、雪のない時期よりは2月のいまごろが訪れやすかろうと、JRを利用して訪問してみたのだった(ついでに虎杖浜で温泉も)。
いくら雪の少ない苫小牧とはいえ、万が一雪が深くてはツボ足では探索もままならないため、用心のためにスノーシューを担いでいった。
JR植苗駅で下車し、駅前から目的の湖畔まではひたすら、線路脇の道を行く。
一本道なので分岐までは迷うことはない。
(以下、地図は国土地理院地形図より引用、赤字は筆者による)
積雪は道を薄っすら覆う程度しかない。シカ、キツネの足跡を見ながら行く。
札幌、空知地方、とくに岩見沢はここ数日で観測史上に残るほどのドカ雪となったが、こちらは例年と特に変わりはないようだ。
途中、鹿よけのゲートを3か所通過。
積雪によりこのゲートが開かない懸念もあったが、JRのメンテナンス路でもあるのか、クルマの轍も残っていることから、真冬でも通過は可能だと思われる。
線路と反対側(湖側)に目をやると、ところどころに獣道ができている。
駅から2kmほど、目的地までの中間地点に「ウトナイ沼南東部砂丘地区」の看板あり。ここまでひとつだけ、ここ数日のものと思われる人間の足跡があったのだが、その足跡はこの森の先に消えていった。ここからだと砂丘部は雪に覆われて見えない。
夏場は、こちらを目当てにウォーキングされる方もおられるようだ。
駅から3.5kmほどで、やがて森の中へと続く分岐にたどり着く。
入り口にはポールとチェーン(写真右側に白く映っているもの)があるため、迷うことはないと思われる。夏場は藪に覆われているかもしれない。
枝葉が上半身をかすめるような、長いことクルマが入っていないと推測されるような作業道が森の奥に続いている。積雪は少なく、担いできたスノーシューは無用の長物となった。道脇には傾いだ標識があり「ケーブル埋設」といった文字が見えた。
湖畔に近づくにつれ作業道は明確でなくなる。
地形図を見ながら方角を決めて進んでいく。
地形図のちょうど道が曲がるあたりに、鉄製のゲートの残骸のようなものがあった。
1963年の航空写真では、このゲートの前方に施設類が並んでいるのが確認できる。
地形図ではここから湖畔まで道が伸びており、ポッチ状の何か建造物も表記されていることから、お地蔵様もここにあるものだと思っていた。しかしポッチは何かの計測設備のようであった。
計測設備を過ぎると湖畔に出てしまう。
また、地形図上でさらに北に延びる道はこれまた藪の中であり、足を踏み出すと氷の割れるような不気味な音がしたため、それ以上進むのはやめておいた。
放流設備近くの足元にあった朽ちた看板。
安平川で...サケの放流…と読める。これはかなり後年のものだろう。
周囲にお地蔵様は見当たらない。
先ほどのゲートらしき残骸の前方、かつて施設群があった箇所まで戻り、周囲を探索する。藪に紛れて、いくつか湖畔には不釣り合いな立木があるのは、かつての屋敷林だろうか?
コンクリの遺構。
ドラム缶の残骸。
貯水槽?
敷地内には堀のように人工的な高低差が見え、かつてため池であったことを思わせる。
20分ほど、背丈ほどもある藪の中を調べて回ったが、いくつか遺構は見つかったものの、お地蔵様と思しきものは見当たらない。小高い木にまたがり、双眼鏡で周囲を見渡してみたりもするが、時間を浪費するばかりで…。
頭上を新千歳空港発着の飛行機が行く。遠くで水鳥の声がする以外は、静寂そのもの。
やはりお地蔵様は移設されたのかな。
諦めて帰ろうとしてゲートの残骸まで戻ったそのとき。
先ほどは地形図のルートに気を取られて気づかなかった、逆方向へと延びる道を見つけた。おそらくはシカ道であろう、実際にシカの足跡もついている。
とりあえず行ってみると…。
見つけた。
アキアジ地蔵尊のご尊顔。
昭和23年10月24日建立、73年前のお地蔵様は確かにあった。
お地蔵様は、小高くなった丘の、さらに蓮台の上から、かつてサケ孵化場の設備のあったあたりを見下ろすように佇んでいる。
以下は位置関係。
お地蔵様の近くに目印の青いテープがいくつかあり、砂丘のほうからこの湖畔にアプローチした人がいたのかもしれない。
鉄製ゲートの残骸に突き当たったら、右手の小高く開けた場所にお地蔵様はある。
夏場は藪が生い茂り到達は難しくなると思われる。
かつて人の営みがあったことを明確に示すのは、いくつかの遺構と屋敷林、そしてこのお地蔵様だけとなってしまった。
お地蔵様がいつまでもここに無事であることを祈るのみである。